※ 下記レビューはあくまでも個人的な感想です。
日本初(恐らく)となるOffice 用アプリの専門書「マイクロソフト Office 用アプリ開発スタートアップガイド」が本日 2013年9月26日 に発売されましたので、早速購入してきました。
作者は富士ソフトさんで概要は下記ページに記載されています。
・マイクロソフト Office 用アプリ開発スタートアップガイド
https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=23191
上記ページの概要を見れば分かる通り、本書では“Office 用アプリとは何か?”、“どんな種類があるのか?”、“どんな仕組みになっているのか?”、そういった基本的なことから丁寧に説明されているので、Office 用アプリをこれまで触ったことが無い人でも分かりやすいようになっています。
アプリの開発方法ももちろん取り扱っており、本書ではOffice 用アプリ開発専用ツール「Napa」での開発を中心に解説されています。
当ブログでも「[Office用アプリ]開発ツール「Napa」のインストール方法」でNapaのことを取り上げていますが、ここまでNapaのことを取り上げている資料は今のところ本書以外には無いのではないか?、そう思うくらいNapaに関する情報は充実しています。
本書では、Office 用アプリの概要、開発方法に加え、アプリの配布方法まで取り扱っているので、本書を読めば一通り開発から配布・公開までの流れが把握できるような構成になっているのですが、その一方で残念に思うことも何点かあります。
まず一点目、アプリの開発に必要なツールについて書かれている部分で、NapaとVisual Studioしか取り上げられていない点です。
当ブログでも散々取り上げているのですが、Office 用アプリの実体はWebページなので、最低限テキストエディタとWebページを公開するサーバー(ローカルサーバーでもWeb上のフリースペースでも何でも構いません)さえあれば開発できてしまいます。
もちろん、専用ツールであるNapaやVisual Studioで開発をした方が効率は良いのですが、アプリの仕組みを理解するという点ではテキストエディタだけでも十分だと、個人的には思います。
本書のような入門書で、然も開発ツールはこれしか無いというような書き方をされると、Office 用アプリに対しての誤解が広まってしまうのではないかと危惧してしまいます。
次いで二点目、これも同じくアプリの開発に必要なツールについて書かれている部分なのですが、Napaのことを“無料でダウンロードできるツール”として紹介している点です。
たしかにNapa自体は無料でダウンロードできるのですが、“Napaを使うための環境”は無料ではありません。
Napaを使うにはOffice 365 開発者向けサイトへのアクセス権が必要になってきますが、アクセス権を持っていない場合は、以下のいずれかの方法でアクセス権を取得する必要があります。
MSDN のサブスクライバーが所有する Visual Studio Ultimate および Visual Studio Premium には、特典として 1 年間の Office 365 Developer サブスクリプションが付いています。すぐに特典を利用できます。
中規模企業向けの Office 365 サブスクリプション (プラン E1 または E3) を持っている場合、Office 365 管理センターから 開発者向けサイトをプロビジョニングできます。詳細については、「方法: 既存の Office 365 サブスクリプションを使用して開発者向けサイトをプロビジョニングする」を参照してください。
次のどちらかのリンクを使用して、無料の 30 日間の試用版 を使用するか、または Office 365 Developer サブスクリプションを購入できます (どちらの場合も 1 つのユーザー ライセンスが付属します)。このサブスクリプションの費用は 1 年間あたり 99 ドルです。
Office 365 開発者向けサイトにサインアップする より
試用期間中は無料で開発者向けサイト、Napaを使うことができますが、永続的に無料で使えるわけではないことを、ちゃんと分かりやすく説明した方が良かったのではないかと思います。
そして三点目、アプリのコードはいくつか載っているのですが、それらの説明がほとんど無い点です。
コードをコピー&ペーストすることを前提としているのか、ほとんどのコードは“以下のコードを追加・削除してください”、とだけ書かれており、文中のコードを見ただけではどのオブジェクトがどんな役割をしているのか、どのメソッドでドキュメントにデータを書き込んでいるのか、あるいはデータを読み込んでいるのか、という肝心な部分がまるで分かりません。
アプリの「作り方」を中心としているのは分かりますが、もうちょっとコードの解説があった方が良かったのではないかと思います。
最後四点目は、Visual Studioでの開発方法の紹介が極端に少ない点です。
先述の通り、本書はNapaでの開発を中心に解説していて、かなりのページを割いています。
一方、Visual Studioでの開発は本書の一番最後にちょろっと、たった7ページで解説しているだけです。
読者層として開発者を想定しているのであれば、これはあまりにも少ないのではないでしょうか。
以上、後半は批判的な感想ばかりになってしまいましたが、それを抜きにしても、体系的にOffice 用アプリのことを学べるという点で本書はお薦めです。
Office 用アプリ以外にもSharePoint 用アプリ、Access Web アプリについても取り上げられているので、最新のOfficeのアプリ開発事情について本書一冊で一通り把握できる、というのは大きな利点でしょう。
本書を読んで、個人的には、“広く浅く”という印象を持ちました。
恐らく、今後Office 用アプリの開発に関して“狭く深く”解説された本が出てくるのではないかと思います。
(ひょっとしたら富士ソフトさんの方で現在執筆中なんじゃないかと、勝手に予想(妄想?)しています。)
もし今後そういった本が出るのであれば、本書と合わせることで、より一層Office 用アプリについての理解が深まるのだろうと思います。
何にせよ、まだまだ始まったばかりのOffice 用アプリで、専門的に取り扱っている書籍が発売されたのは非常に喜ばしいことです。
本書の発売をきっかけに、少しでもOffice 用アプリに興味を持ち、開発してみようという方が増えてくれることを切に望みます。
そういえば、本書のサポートサイトにアクセスしたところ(2013/9/26 時点)「お探しのページが見つかりませんでした。」とのレスポンスが返ってきました。
URLは何回も確認したので間違ってはいないと思うのですが、これはいったいどうなっているのでしょうか・・・!?
2013/9/27 追記:
出版元であるマイナビ ブックスさんに問い合わせたところ、サポートサイトの用意が遅れている、とのことでした。
2013/9/27 追記(2):
マイナビ ブックスの担当者の方から連絡がありました。
本書籍のサポートサイトが下記リンクにて公開されたようです。
・「マイクロソフト Office 用アプリ開発スタートアップガイド」サポートサイト
http://book.mynavi.jp/support/pc/4827/
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