前回の記事の続きです。
大地のハンター展で印象に残った展示を紹介します。
展示紹介
吸血ハンター
大地のハンター展では、血液や体液を吸う生き物を“吸血ハンター”として展示していました。
動物が生きている獲物を捕食する場合、獲物は自分の体よりも小さい動物に限られてしまう。そこで小さな大食漢たちは、体外消化という特殊な消化方法を使うようになった。相手に食らいつき、強力な消化液を注入し、筋肉も内臓も溶かして吸い上げてしまえば、自分よりも大きな動物を獲物にすることができる。また吸血動物とよばれる動物は、脊椎動物の血管に針を差し入れて吸血する、または皮膚を食い破り流れ出た血液を吸う。多くは外部寄生虫であり、吸血に際して各種ウイルスや寄生虫などの病原体を伝播するものが多いため衛生害虫ともよばれる。
展示パネルより
下の写真はムシヒキアブ科の「ルリオオムシヒキ」(学名:Microstylum oberthurii)、台湾などに生息するムシヒキアブで、自分の体長よりも大きなセミをも仕留めるのだとか。
下記サイトにはセミを捕食しているルリオオムシヒキの写真が載っています。
「これは僕の腕!!」と書かれたパネルがあり、何のことかと思って写真をよく見たら、本特別展の総合監修を務めている川田伸一郎先生の腕から血を吸っているヤマビルの写真でした。
展示されている標本はベトナム産の種類とのことです。
『血を吸う鳥がいる』というのはテレビ番組か何かで見た記憶があるのですが、バードカービングが展示されていました。
ダーウィン島とウォルフ島にのみ生息する「チスイガラパゴスフィンチ」(仮和名)です。
ハシボソガラパゴスフィンチ(Sharp-beaked ground finch)の一亜種で、ダーウィン島とウォルフ島にのみ分布する。チスイガラパゴスフィンチは他の亜種に比べて体が大きく、カツオドリの腰を嘴で突いて流れ出た血液を飲む習性がある。他の鳥でも、例えば、ハシブトガラスがシカの血を吸う行動が知られるが、血液を常食とする鳥は世界でこのフィンチのみである。この亜種はカツオドリの血や卵以外にはサボテンの花蜜や種子、昆虫などを食べる。
公式図録 p.111 より
エサが十分でなかったのか?、自分の体をより大きくするためなのか?、何故このような習性を持つようになったのか、非常に興味深い吸血鳥です。
血液を吸われる側のカツオドリと、同様の習性を持つ血液食のナミチスイコウモリも一緒に展示されていました。
ちなみに、この鳥の“食事シーン”は下記の動画で見ることができます。
このコーナーで個人的に最も印象深かったのが「ジャコウネズミを吸血するミナミネズミマダニ」です。
(※苦手な方がいらっしゃるかもしれませんので写真は小さくしてあります。)
この標本は、川田先生が手づかみで捕獲したジャコウネズミで、“動きが非常に遅かったため、多数のミナミネズミマダニにつかれたことによる貧血状態であったと推測される”(展示解説より)とのことです。
マダニがくっついたままの標本を見るのはこれが初めてでしたが、こういった特殊な状態の標本を見る機会はそうそう無いので、じっくりと観察してきました。
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