深海ファンなら心躍る企画展「深海ミステリー2020 -ダイオウイカがみる世界-」が茨城県自然博物館で開催されているので早速行ってきました。
新型コロナウイルス感染症対策
・・・と、その前に、このご時世、博物館を訪れる前に新型コロナウイルス感染症対策はしっかりと取らねばなりません。
- 出かける前に体温測定
- 熱があるとき、体調が悪いときは無理して行かない
- マスク着用
- 展示を見るときはソーシャルディスタンスを心掛ける
さらに7月28日時点では、
- 混雑時の観覧は2時間程度を目安とする
- 混雑時はバス及び10名以上の団体での来館は控える
- 東京都からの来館は当面の間控える
- 展示物及び展示ケース等には触らない
といった注意事項もあります。
私も上記をしっかりと守りつつ、企画展を楽しんできました。
詳しい注意事項については公式サイト、および下記動画をご参照ください。
開催概要
- 名称:第78回 深海ミステリー2020 -ダイオウイカがみる世界-
- 会期:2020年7月18日(土)~10月4日(日)
- 会場:ミュージアムパーク 茨城県自然博物館
- 開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は各閉館時刻の30分前まで
- 休館日:毎週月曜日 ※8月10日、9月21日、22日は開館し8月11日、9月23日は休館
- 入場料:大人 750円、高校・大学生 460円、小・中学生 150円
土日祝日・お盆期間といった混雑時期は、下記ブログ記事にある通り入場制限が行われることがあるので、来館する際はご注意ください!
混雑状況は下記Facebookが参考になるかと思います。
やはり平日に訪れるのがオススメのようですね!
ダイオウイカの液浸標本
目玉の一つであるダイオウイカの液浸標本はのとじま臨海公園水族館所蔵、解説にもありますが2019年1月31日に石川県でリュウグウノツカイとともに採取されたオス個体で、当時のニュース映像を下記サイトで見ることができます。
全長322cmと、ダイオウイカとしては決して大型の個体ではないですが、間近で見るとその大きさに圧倒されますね!
2019年鳥取県平田沖で採取された推定全長7~8mのダイオウイカの軟甲(のとじま臨海公園水族館所蔵)も展示されています。
ダイオウイカのすぐ近くで展示されていたのがこれ↓
ストランディングしたマッコウクジラの胃内容物(大阪市立自然史博物館所蔵)です。
この内容物から、マッコウクジラがヒロビレイカやオオトガリウチワイカ、ダイオウイカさえも捕食していることが分かります。
(マッコウクジラがなにを食べているのか?、その調査については「我孫子サイエンスカフェ・海の巨大イカ類 vs マッコウクジラ」の資料が分かりやすかったです。)
奥の赤い蓋のビンがダイオウイカです。
人間からすれば非常に大きなダイオウイカですが、海の中ではさらに大きなマッコウクジラに食べられる、深海のスケールの大きさが伝わってくる展示です。
“現在は、マッコウクジラが超音波でダイオウイカをしびれさせ、ふらふらになったところにかぶりつくと考えられています。”
というのも初めて知りました。
ちなみに、マッコウクジラの頭骨(国立科学博物館所蔵)もちゃんと展示されています。
ダイオウグソクムシの生体展示
会場で特に人気が高かったのが生きたダイオウグソクムシ(萩博物館所蔵)の展示です。
足を止めてじっくりと見る方も多いためか、「ダイオウグソクムシはずっと見てても動きません!次の人にゆずってあげてね!」といった注意書きまで貼ってありました。
別の場所にはオオグソクムシ(むさしの自然史研究会所蔵)、ダイオウグソクムシ(むさしの自然史研究会所蔵)、コウテイグソクムシ(仮称)(アクアワールド茨城県大洗水族館 or むさしの自然史研究会、吉田賢治氏所蔵)の剥製が並んで展示されており、分かりやすく大きさが比較できるようになっていました。
コウテイグソクムシ(正式な学名はまだ決まっていない)の脚をじっくり見る機会もそうそう無いので貴重な体験です。
(もしかしたら苦手な方も多いかもしれません・・・)
深海魚のカラー魚拓
魚拓には、魚に墨や絵の具を塗ってその姿を布や紙に写し取る「直接法」と、魚に布や紙をのせてタンポで上から墨や絵の具で色をつける「間接法」があるそうで、今回の企画展では山本龍香(やまもとりゅうか)氏の貴重なカラー魚拓(間接法)が展示されていました。
圧巻のダイオウイカの魚拓。
発見場所や全長、窪寺先生の印まで入っています。
魚拓の製作工程は下記動画や記事の解説が分かりやすいですね。
個人的には、カグラザメの色が特にキレイだと思いました。
深海生物の陶芸作品と並んで展示されているのもまた面白い!
身近な深海生物
「生活の中の深海生物」と題して、駿河湾や富山湾、茨城県沖で獲れる深海生物の料理も紹介されていました。
深海をテーマにした企画展で“食”にまで触れられているのは中々新鮮です。
魔除けとしてタカアシガニの甲羅で作ったお面を飾る風習があることも初めて知りました。
東北地方太平洋沖地震の地震断層
チムニーやマンガンノジュールといった鉱物の展示もありました。
中でも注目したいのは「東北地方太平洋沖地震の断層面コア試料」(JAMSTEC・海洋研究開発機構所蔵)ですね!
レプリカなのはちょっと残念ですが、スメクタイトを多く含み、断層部分が非常に滑りやすい状態にあったことが見てわかるようになっています。
私は2017年に国立科学博物館で開催された特別展「深海2017」で間近で実物を見たことがありますが、そのときは衝撃的でした。
海のごみ、マリンデブリについて考える
以前書いた記事で、ストランディングしたシロナガスクジラの胃の中からもプラスチック片が見つかったことについて触れていますが、近年、海洋ごみ、特にプラスチックごみが大きな問題となっています。
本企画展でも、海岸で採集されたごみやクジラやミズウオの胃の中から見つかったごみが展示されています。
各展示一部紹介
下記は展示されていた標本や剥製の一部紹介です。
最後はレストランのメニューにあった「深海シーフードブラックカレー」
残念ながら私が訪れたときにはもうレストランが閉まっていたので食べられませんでしたが、見た目も映えそうで味も美味しそうですね!
POPもカワイイ!
超オススメの展示解説書
本企画展に訪れた際に是非是非ゲットしていただきたい、私のイチオシのお土産(?)はこの展示解説書。いわゆるパンフレットですね!
展示物の解説はもちろんですが、ダイオウイカ研究の第一人者である窪寺恒己先生や“深海魚ハンター”として有名な長谷川久志氏のコラムまで載っています。
全38ページでフルカラー!
これでお値段なんと税込み610円。
安い。安過ぎる!
博物館内のミュージアムショップで販売されていますが、新型コロナウイルスの影響でミュージアムショップは現在時短営業中。閉店16:00(最終入店15:30)となっているので注意が必要です。
ただ、私が訪れたときは、この展示解説書だけはミュージアムショップの開店時間外でも博物館1階にあるインフォメーションセンターで購入できるようになっていました。
(非常に有難い措置です。ありがとうございます!)
また、この展示解説書を通販で購入できるか伺ったところ、価格(610円)+送料(215円)分の現金書留を「ミュージアムパーク茨城県自然博物館友の会」宛に送ることで、ご対応いただけるとのことでした。
(送料については地方によって異なるかもしれません。購入を希望される方は、事前に友の会に問い合わせた方が良いかと思います。)
感想
深海ミステリー2020、限られた展示スペースでも内容はてんこ盛りで大満足の企画展でした。
上で紹介したグソクムシの展示もそうですが、訪れた人が分かりやすいように、興味を引くように、標本や剥製の配置のされ方も非常に工夫されています。
また、単に各展示を見てそれで終わり ― というだけでなく、海洋ごみ問題について考える切っ掛けにしてほしい!、そんなメッセージも強く伝わってきました。
このことは『ごみに付着したオオグチホヤ』(魚津水族館所蔵)の標本が一番最後に展示されていることからも分かります。
本企画展でも取り上げられている、プラスチックごみは非常に身近な問題です。
水深1万メートルを超える超深海でもプラスチック袋の破片と見られるごみが発見されたことは記憶に新しく、また、POPs(残留性有機汚染物質)が吸着したプラスチック片が人体にどのような影響を及ぼすのかもまだはっきりと分かっていません。
一度海に流れ出たプラスチックごみを回収することは容易ではありません。
今年の7月1日からプラスチック製レジ袋の有料化がスタートしましたが、いま私たちにできることは、「5R」を実践して排出するゴミをなるべく減らし、資源を有効に活用していくことなのだと、今回の企画展で改めて実感しました。
- Refuse(リフューズ)断る:ごみになるものを断ること
- Reduce(リデュース)発生抑制:ごみを発生させないこと
- Reuse(リユース)再使用:ものを繰り返し使うこと
- Repair(リペア)修理:ものを修理して使うこと
- Recycle(リサイクル)再生利用:資源として再生利用すること
https://www.city.koto.lg.jp/381104/kurashi/gomi/5r/14139.html より
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